恐怖症や苦手意識は、どうすれば手放せるのか?
前回は、恐怖症や苦手意識がどのように生まれるのかについてお話ししました。
「出来事」が先にあり、そこで生まれた「感情」が、「思い込み」として潜在意識に残る。

この仕組みがわかると、次に気になるのは「では、どうすればその思い込みを手放せるのか?」ということではないでしょうか。
今回は、実際の手放し方についてお話ししていきます。
まずは「きっかけ」となった出来事を探す
恐怖症や苦手意識の正体は、出来事そのものではなく、その出来事に付随して生まれた「感情」でした。
出来事が起こる → 感情が発生する → その感情が「思い込み」として潜在意識に残る、という流れです。
ですから、手放すための最初のステップは、きっかけとなった出来事を見つけることです。
「いつから、どうしてこの感情が生まれたのか」を、記憶をたどりながら探っていきます。
やり方は、大きく分けて二つあります。
ひとつは、セラピストが、リーディングによってその方の記憶をたどっていく方法です。

もうひとつは、ヒプノセラピーのように、セラピストの誘導を受けながら、ご本人自身が記憶をたどっていく方法です。

きっかけがわかったら、そのときの感情を手放す
次にやるべきことは、そのときに生まれた「感情」を手放すことです。
土の中に埋もれていた種を、掘り出して消してしまうようなイメージです。
その方法は、実はとてもシンプルです。
感情は上書きできる
感情は、あとから新しい体験をすることによって、上書きできるからです。
たとえば、友人が旅行のお土産にTシャツを買ってきてくれたとします。
「はい、お土産」と渡されたのが緑のTシャツで、「緑かぁ…あんまり好きじゃないんだよなぁ」と、内心少しがっかりしたとします。
ところが、「あ、そうだ、赤もあるんだけど、こっちの方がいい?」と赤いTシャツを差し出されたら。
「あ、そっちがいい!」と、ほっとした気持ちに変わりますよね。

たった数秒の間に、同じ「お土産をもらう」という出来事に対する感情が、まったく違うものに塗り替えられています。
これが、感情の「上書き」です。
「書き換える」というのは、つまりこの「上書き」のことです。
上書きする方法は、実際に出来事を再体験する方法と、イメージを使う方法があります。
「再体験」して、プラスの感情に書き換える
たとえば、子どもの頃に鯖を食べて食あたりした経験があったとします。
出来事=鯖を食べて、あたった。
感情=お腹が痛い、苦しい。
思い込み=「鯖はあたる」というマイナスの思い込み。

しかし、大人になってから改めて鯖を食べる機会があり、
出来事=鯖を食べる
感情=美味しい!
という体験をしたとします。
すると、以前のマイナスの思い込みは、「鯖は美味しい」というプラスの思い込みへと書き換わっていきます。

このように、ある出来事に伴って生まれた「マイナスの思い込み」は、同じ出来事を再体験してよい感情を味わうことによって、「プラスの思い込み」へと書き換えることができるのです。
イメージを使ってプラスの感情に書き換える
とはいえ、恐怖症や苦手意識の原因になった出来事を、そのまま現実の中でもう一度体験するのは、簡単なことではありません。
そこで役立つのが「イメージ」を使った書き換えです。私が16年間、行ってきたのも、基本的にはこの方法です。
きっかけとなった場面を思い出してもらい、そのときの記憶をイメージの中でもう一度たどっていきます。
そして、そのイメージの中で、新しい感情を体験してもらうのです。
実際に現実の中で出来事を再体験するか、イメージの中で再体験するか。
その違いはあっても、「出来事に感情を結びつけ直す」という本質的な仕組みは同じです。
イメージする=潜在意識
私はこのイメージの力を使う方法は、かなり有効だと考えています。
がん患者さんの心理療法として知られる「サイモントン療法」も、イメージの力によって身体や心に働きかける手法のひとつです。
人はイメージを使うことで、潜在意識に直接つながり、自分自身の手で潜在意識を書き換えることができます。
イメージそのものが、潜在意識の領域だからです。
この仕組みを知っていれば、感情を手放すことは、セルフでもできます。
記憶に結びついた感情は、本当に変えられるのか
「感情を書き換える」と言われても、にわかには信じられない、という方もいらっしゃるかもしれません。
以前、テレビでこの「書き換え」によく似た実験を見たことがあります。
2014年に、理化学研究所が発表した、マウスを使った「光で記憶を書き換える」研究です。
「嫌な出来事の記憶」を「楽しい出来事の記憶」に転換させることに成功した、というもの。
実験の流れ
1. まず「イヤな出来事の記憶」を作る
オスのマウスを小さな部屋に入れ、足に軽い電気ショックを与えます。
すると、マウスの脳内に「この部屋は怖い場所だ」という「嫌な出来事の記憶」ができます。

このとき、その記憶ができた部分に、目印をつけておきました。
2. 「嫌な出来事の記憶」を呼び出す
その後、目印をつけた部分に光を当てると、マウスは、まるでこわい経験を思い出したかのように、「すくみ」ました。

3. 「嫌な出来事の記憶」を思い出している最中に、楽しいことをさせる
ここがこの実験のポイントです。
こわい体験を思い出している、まさにそのタイミングで、今度はメスのマウスを部屋に入れて、1時間ほど一緒に遊ばせたのです。

4. 結果:記憶の中身が入れ替わった
すると、脳内の「怖い記憶」のあった部分が、今度は「楽しい記憶」に変わったのです。
(https://www.riken.jp/press/2014/20140828_2)
記憶が脳に残るものなのか、潜在意識に残るものなのか、科学的に証明することはできませんが。
「出来事が起き、感情が生まれ、それが思い込みとして残る。その思い込みを、書き換えれば変化が起きる」という構造そのものは、私がふだん行っていることと、とてもよく似ていると感じています。
先端恐怖症を書き換えた事例
生徒N美さん(30代)は、先端恐怖症でした。
マドラーの先端や、お玉の柄が自分に向くと怖い……
その感情が生まれたきっかけは、過去世の出来事でした。
戦いのさなか、自分に向かって飛んでくる「矢の先端」を見たときに、その恐怖が残ってしまったのです。
当時の感情を書き換えると、恐怖はほとんど感じなくなったそうです。
※その内容を簡単に動画にまとめてみました。
潜在意識に残っている「過去の感情」を、
「仕方のないこと」
「一生付き合っていくしかないもの」
「脳の誤作動」
として片づけてしまうのではなく、その原因となった出来事を見つけ、
そのときの感情に、イメージの力で働きかける。
それだけで、恐怖や苦手意識は薄めることができます。
次回は、「感情」が転生しても持ち越されるしくみについてお話します。
(つづく)
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